拒食は、本人の「わがまま」のせいではありません。
過食は、本人の「意思が弱い」せいではありません。
家族会やカウンセリングのなかで、ご家族のお話をお伺いすると、病気や症状への正しい知識がないがために、不幸な行き違いが起こっているケースを目にします。
拒食症は、一般常識では「理解しがたい」病気ですので、それは仕方がないことかもしれません。しかし、サポートの第一歩は、病気と患者さんご本人の気持ちへの正しい理解です。
胃潰瘍なら、なんとなくストレスで胃が痛いというのは普通の感覚で理解できるでしょうし、潰瘍の写真を見せられれば、「かわいそうに」と感じるでしょう。
しかし、拒食症もストレスで起こる病気ですが、「食べられない」「やせたい気持ちになる」「体型や体重にこだわる」ということが、ストレスやつらい気持ちの結果だとはなかなか信じられないでしょう。
食べないこと、食事にこだわることを、本人の「わがまま」と感じてしまうかもしれませんが、決してそうではありません。摂食障害のせいで、食べたくても怖くて食べられないのです。
同様に、過食は本人の「意志が弱い」せいではありません。摂食障害のせいで、やめたくてもやめられないのです。
ですから、「食べない」「食べ過ぎてしまう」ことで、患者さんの性格や行動を責めても逆効果です。「わかってもらえない」と患者さんを追い詰めるばかりです。
一見わかりにくいようですが、この病気には明確な科学的メカニズムがあります。
それは、ひと言で言うと「やせによる擬似安心感」と「飢餓症候群」の悪循環です。
多くのご家族が、病気のメカニズムを理解することで、患者さんの理解しがたい行動のなぞが解け、問題に対処しやすくなったと述べています。
また、多くの回復した患者さんが、「家族や身近な人が病気について理解してくれたのが、回復の助けになった」「病気を理解せず、わがままだと責められた時期はつらかった」「家族が私のつらい気持ちや、やめられない食行動をわかってくれたのが一番うれしかった」と述べています。
もちろん、「症状」だけでなく、その奥にある患者さん一人一人の「つらい気持ち」「本当の気持ち」を理解することが大切ですが・・・。
正しい理解が、回復のサポートの第一歩です。