7.拒食症の過食期とむちゃ食い/排出、および過食の違い

拒食症(神経性食欲不振症)の過程で、自分で抑えられない過食衝動が起こり、胃が破裂しそうなほど食べても、まだ食べたくなることがあります。

これは人体の低栄養への防御反応として当然なことです。

治療者は「自力で回復する良い機会」ととらえて、自己嘔吐や下剤乱用をしないように指導します。約50%の患者さんがこの過食期を経て治癒します。

やせていた時期を補うかのような食べ方で、数ヶ月~数年続くこともありますが、この過食は体のニーズとして起こっているので、自己嘔吐や下剤の乱用をせず健康体重に回復すれば、必ずこの過食はおさまります。

過食期になりたくなければ自分から栄養状態を改善して、衝動を未然に防ぐしかありません。多くの患者さんが健康時より低い体重で止めたいと希望されますが、一度重症の飢餓状態にさせられた脳は健康体重まで回復しないと過食の衝動をストップしてくれません。

ところがどうしてもやせていたいと思う場合は自己嘔吐や下剤の乱用という行為をするようになります。これが拒食症(神経性食欲不振症)のむちゃ食い/排出型です。症状が慢性化して治りにくいといわれています。

一方、過食症(神経性大食症)は、短時間に大量の食物を衝動的に食べる発作が起こる病気です。拒食症(神経性食欲不振症)との違いは体重が正常範囲にあることです。数千カロリーの食品を、しかもいつもは避けている甘く脂っこい食品を短時間で食べます。さらに、大食後は後悔や自責の念にさいなまれ、強い抑うつに襲われます。

過食は、疲れたとき、心理的ストレスがあるとき、家族が不在のとき、何も予定がないときに起こりやすいという特徴がありますが、習慣になると毎日でも起こります。患者さんは「食べているときだけ何も考えない開放感がある」と、アルコールと同様のストレスの解散と快感を感じています。

しかしやっかいなのは、この患者さんには、「やせていなければ自分の価値はない」という痩身や体型への強いこだわりがあり、過食後、過激なダイエットをしたり、嘔吐や下剤で体重の増加を抑えます。

過食症患者は若年女性の2~3%といわれていますが、体重は正常体重なので、本人が打ち明けない限り家族でさえ気づかないことがあります。

過食は害があるとはいえ有効なストレス発散方法になっているので、最初から過食だけを止めることは困難です。ストレスを受け取りやすくためやすい考え方や物事の認識を変えるようにカウンセリングします。

また、自分の適正な体重を受け入れること、過食を誘導しやすい身体的飢餓を予防すること(不規則な食事、過激なダイエット、嘔吐、下剤乱用、過剰な運動をやめる)と過食しやすい生活パターンの修正(夜更かし、孤食、暇を減らす)を指導します。又、抗うつ薬の治療もある程度有効です。

治療は!
生物学的体重を受け入れる
飢餓を予防する食事療法
過食は安定剤・悪友
予防に自分の癖や良い習慣を取り入れる
現実のストレスに適切な方法で対処する
認知行動療法、薬物療法