8.あなたの体重にできること〈行動制限〉

摂食障害/拒食症の患者さんは、まじめながんばり屋さんが多く、なまけ者に見られることを極端に心配し、疲れても休もうとしません。

また、飢餓が脳の前頭葉機能を障害するため、疲労感が認識できなくなります。

そこで、知らないうちに体力を消耗し身体的危険を招くことがないように、体重に合わせた運動の制限が必要です。

20kg台の体重や標準体重の50%では低血糖昏睡で意識を失う危険があり、入院による栄養治療が不可欠です。

60%では消化機能や思考力の低下があり自力では体重を増加しにくく、入院による栄養療法が勧められます。

70%では生命に関わるような合併症の危険は低下するものの、就学や就労には不十分で、低身長や骨粗鬆症などの低栄養に伴う合併症が悪化し、標準体重の85~90%以上に回復しなければ月経は再来しません。

一般的に飢餓による精神症状によって日常生活に明らかに支障をきたすのが35kgと考えられています。

学校の授業が頭にはいるには最低65%(約35kg)が必要です。35kg以下では長期間の通学は続けられず、往々にして入院、あるいは自宅療養になります。

学校の体育や体育クラブは、マラソンや水泳など過激なスポーツを除けば、本人がどうしても参加したい場合は35kg以上で許可します。35kgでは本来の運動能力は発揮できません。競技スポーツは40kgでも不十分です。

修学旅行や研修旅行も同様で、登山や遠足などは40kg以上、登山や遠足は宿舎で待機する場合は35kgで許可します。外国でのホームステーでは、一般に40kg以下では受け入れてもらえません。就職の願書や面接では、やはり40kg以下では障害になることがあります。

これらの体重の基準は、患者さんがよい経験を積める十分な体重ではないからです。30kg以下の患者で自分の身の危険は決して認めず、どうしても参加することを希望する場合は、「一緒にいる友人や先生は心配で楽しめないし、あなたに合わせた行動では面白くないかもしれない」と、相手側の心情もきちんと伝えていきます。