2.摂食障害/拒食症の主な後遺症

やせに伴う体の異常の多くは体重が回復すれば改善します。しかし、後遺症になるものがあります。

日本人女性の思春期では、10歳から14歳に身長の急速な成長(スパーク)、6ヶ月送れて体重のスパークが起こり、平均12.3歳で初潮を迎えます。さらに、14~15歳に骨のカルシウム量はピークになります。このピーク値が高ければ高いほど年をとってからの骨粗鬆症の予防になります。

このように思春期には重要な体の発達があり、これらには栄養が重要であることは明らかです。

①骨粗鬆症

拒食症(神経性食欲不振症)患者さんでは低体重、たんぱく質やカルシウムを含めた低栄養、骨の成長を促すインスリン様成長因子1の低下、女性ホルモンの低下があり、骨粗鬆症を起こしやすくなっています。骨カルシウム量に最も影響を及ぼすのは低体重期間です。

骨カルシウム量は急激に減少しますが、回復は遅く、BMIが16.4以上にならないと、どんどん骨カルシウム量は減ります。  

②歯の脱落

嘔吐するものは食べた食物だけでなく胃酸などの大量の消化液です。胃酸はpHが1~2と強酸で、歯を溶かします。
自己嘔吐を長年続けると歯や歯肉を痛め、30歳代で総入れ歯になることがあります。

③低身長

14歳未満で発病した患者さんでは、体重減少時に一致して身長の伸びが止まり、最終の身長が予想された身長より低くなることがあります。

体重が回復すると、身長の伸びは追いつき成長をして回復しますが、やせが長引くと最終身長が低くなります。身長の伸びともっとも関連の深いホルモン(インスリン様成長因子1)が炭水化物やたんぱく質の摂取や体重と比例するからです。

低身長の予防には、BMI(Body Mass Index)<16kg/m2の低体重期間を少なくとも1年以内に短縮することが勧められます。