「やせているとなぜか安心」「体重を増やすのは怖い」と感じているのはなぜでしょうか?
拒食症の「やせ」にはメリットがあるのです。やせると「嫌なことをそれほど嫌とは感じない」「つらいことも耐えられる」という心理の変化が起こります。
これはストレスへのひとつの防衛反応です。カロリー計算や運動などやせることにのめりこんで、他のことを考えないようにするという不適切な反応が出てしまいます。
「やせていればなぜか安心だった」、「いやな現実を考えないで済む」、「周囲が優しくしてくれる」、「失敗してもやせのせいにできる」、「やせることだけが今までで一番の達成感」と感じてしまいます。
どんなストレスが発病のきっかけになるのでしょうか?
勉学の過重や進路の迷い、友人関係の悩み、家庭内の問題など思春期にありがちな問題です。
複数のちょっとした悩み事が重なれば、若い方はどうしていいのかわからなくなります。小さなストレスが積もり、コップの水があふれるように発病します。
やせを治されたくないので、病気、やせ、空腹、疲れを否定してしまいます。体重を増やそうとする他人は敵に思えるのです。
そして、やせを維持するために、自分でも異常と知りつつ、小食、大量の低カロリー食品やダイエット食品の摂取をし、運動によるエネルギー消費量を増やすのです。
まじめで、負けず嫌いで、完璧主義の人が多いのが特徴です。目標が高いので挫折感を経験しやすく、それが発症のきっかけになることもあります。
マスコミやファッション業界は「やせ」が女性の自信となるような風潮を作り出し、挫折を感じた若い女性は体型や体重で自分の価値を見出そうとすることが最近の患者数増加の原因といわれています。
飢餓によって起こる困った症状
摂食障害/拒食症になってから、自分の行動パターンや性格が以前とは変わってしまったと感じたり、または、周りから食べ方が異常だとうるさく言われたりしてしまうことはないでしょうか。
大きく分けると、
①やせるための行動
②反動の食欲や食への執着
③飢餓によって生じる神経症状
です。
やせればやせるほど、困った行動や心理面の異常が増えていきます。その多くは生理的な飢えによる「飢餓症候群」が原因です。これは飢餓によっておこる症状で、健康人に飢餓実験をしても、同様の症状が出ます。
体が飢えている反動で過食の衝動が沸き、食べ物のことばかり考えてしまい、生活のすべてが食で振り回されてしまいます。
飢餓症候群から起こる行動
① むちゃ食い(過食)をしたい衝動に駆られる、過食、盗み食い
②異常な食習慣 コーヒー、お茶、スパイスの過剰摂取
③レシピ、料理雑誌、メニューの収集 料理番組や料理雑誌を食い入るように見る
スーパーやデパート地下の食品売り場めぐり 有名で高価な食品に執着する
④料理好き、栄養科や調理師を志望する
⑤母親や兄弟に食事を強制する
⑥大量の食品を隠し持つ
⑦過活動、過剰な運動(ストレッチ体操や長い散歩や縄とび)、睡眠時間が短い、
エレベーター・エスカレーターを使わない、乗り物で座らない、長風呂
飢餓症候群から起こる心理的な問題
- 集中力、判断力の低下 不眠 不安、怒り、気分不安定(イライラして落ちつかない)
- 抑うつ、無気力 自己評価の低下
- 強迫性の増強(きちんとしなければ気が済まない、同じことを何度も確認するなど)
- 認知の変化(物事を悲観的にとらえる、物事の一面しか見ないなど)
- 情緒や社会性の変化(何も楽しく感じられない、人に会いたくないなど)
- このように、飢餓によって思考も行動も生活すべてが食に振り回されるようになると、集中力や判断力なども低下し知的な活動ができなくなります。もとのあなたの性格も変わり、異常に几帳面になったり、子供返りしたり、家族を非難たりして、周りの人とのいさかいも多くなります。
- これらは飢餓によって起こる症状で、低栄養状態を改善しない限り軽快しません。また、飢餓症候群は嘔吐や下剤の使用をすると、さらに悪化します。体重と食事のこと以外は健康な判断ができるので精神病ではありませんが、飢餓症候群の症状に周囲の人も困りはて、あなた自身も困っているのではないでしょうか。
発症のきっかけは、たわいのないストレスであったかもしれません。しかし一度この病気を発症すると問題がさらに大きくなります。「やせの悪循環」が生じてしまうのです。
本当に解決しなくてはならないのは現実のストレスです。