- 参加:21家族 22名
- 日時:2012年9月7日金曜日
- 内容:摂食障害の患者さんを回復に導く対応では、「良い点に気付くこと」と「ほめること」が重要です。その理由は、それが患者さんの「自信」を育て、回復につながる良い行動を増やす効果があるからです。
※解説は、家族にできること/8.良いこと探しとほめることをご覧下さい。
講義の後、患者さんと家族の間で日々起こる、どう対処してよいかわからないご家族からの相談に、皆でアイディアやアドバイスを出し合いました。
相談
やせが続いていましたが、最近、急に体重が増えました。標準体重の少な目な方なのに、すべて自分が太っているせいにして、やせていればすべてがうまくいくという感じです。
「太っているから~できない。」「私、太っているでしょ?」と言ってくる時、どのように対応したら良いでしょうか?
アイディア・アドバイス
・うちの娘も健康になりたいという反面、やせたいといって不安定になって、「太った?」と言ってきます。「大丈夫だよ。もうこれ以上太らないから」と言うしか言葉がありません。(母親)
・娘は標準体重以上に太ってしまって、「太った?」などと何度も言ってきりがなかったのですが、太ったという話は切り離して、違う良い所をほめたりするようにしました。(母親)
・体重が回復すると、心も回復して普通の感性が戻り、現実が見えて思うようにいかないことが出てきたり、いろいろな事を感じるようになります。やせている時は、このようなことを感じなくなっています。
彼女たちは語彙が少ないので、「学校は楽しいけれど~できなくて辛い。」「友達がいない。」などとは表現できず、「太ったから~できない」と言います。しかし、本当は自分の人生をこれからどう生きていくかが問題なのです。「太った」という言葉に対応するのでなく、もっと深いところに気づいてあげることが大切です。
悩んであたりまえなので、「あなた大変だよね」「~で悩んでいるのでは」等、体重ではない問題に気づいていると、言葉をつくして伝えてましょう。
標準体重など事実だけを伝えることも良いです。(鈴木)
・太っているかどうかでもめるのは不毛なやりとり(EDトーク:体型・体重に関する患者特有の訴えとそれに対する周りの人の反論で構成される不毛な会話。他のことに費やすエネルギーがなくなり有害)です。
「その言い合いはしたくない」「まただよね」と切り離したほうが良いでしょう。こちらが見抜いているとわかると、本人も気づきます。その話題は3分だけなど、ルールを作ったりするのも効果があります。(小原)
・うちは、EDトークのことを教えて、「その話題はやめよう」と伝えています。他の話題が増えて、少し不毛な言い争いが減った気がします。(母親)
相談
レシピを見たり、作ったり、食事をたくさん作って、冷蔵庫に詰め込んだり、台所を占拠しています。
食材の買い出しにも行きます。読書と食事のことで一日過ぎています。食事の用意などで時間を費やさないで、仕事についてほしいし、自立してほしいと思っています。
その気持ちをどう本人に伝えればよいでしょうか?
アイディア・アドバイス
・娘は、今まで食べ吐きしてきて、人の話が頭に入りませんでしたが、働き始めて、人生が少し良くなったと話しています。人生に対してましだと思えることがあると良いと思います。(母親)
・この病気にかかる子は、昭和初期の方が生きやすいのかもしれません。今の時代のバリバリ働いているタイプではありません。正社員になるには、少しのハンディが必要だと思います。親が工夫して、本人に合うところを見つけてあげるくらいのことをしてあげた方が良いです。
また、自立できない時の為の安全設計をして、いざとなったら大丈夫という保証をおいてあげるのが良いです。家に余裕があると、甘えさせてしまい病気を応援してしまいます。家計の事情など具体的な数値を出して(父の退職など)いくと良いでしょう。在宅でできる資格もお勧めです。
料理の時間が長くなるほど、病気に逃げているということです。(鈴木)
・娘は、一日一食しか食べていないらしいです。今までいろいろ言い過ぎて、お母さんが食べろというから食べられないんだと言われて、それ以来、何も言えなくなりました。10年以上時間はかかりましたが、本人は自分で問題を乗り越えてきて、自分のことを太っているというより、きれいになったと言うようになりました。
仕事の上司が、ほめてくれたり、かわいいねと言ってくれているのも良い影響のようです。(母親)
相談
体重は元に戻って、アルバイトをしています。一人暮らしをし、過食嘔吐が始まりました。バイト先のパン屋で残りをもらい、食べて吐いてしまっているようです。
ストレス発散で週1、2回ならよいかと思いました。その話しが出た時に、どう捉えて、どう対応したらよいでしょうか?
アイディア・アドバイス
・どう対応したら良いかは、まだ手探りです。生きていてくれるだけで、良いと思っています。最近、死にたいという言葉が、減ってきていると思います。(母親)
*死にたいと言うことを問題と扱うのではなく、減ってきていることに目が向けてあげています。小さな変化に気づく、あたたかい見方で患者さんは助かると思います(小原)。
・人生に挫折してなった病気なので、薬もありませんし、家族も根本を治せません。やせて、感じなくして、頭を馬鹿にして、この世界で生きています。過食は命を救っています。食べている時は楽になり、快感です。吐くと、嫌な事が出て行く気分で、これも快感です。食べ終わると現実や挫折のことを考えなくてはいけません。
過食を減らすには、人生を少しでも価値あるものに持ち上げて、心を埋めていかないといけません。食べ物では埋まりません。過食は命をつなぐために必要なものと捉えて、やりすぎは時間とお金で縛り、その範囲でやってもらうようにしましょう。
落ち込む時は、新橋の酔っ払いおじさんだってそうだよ。上品にやろうね。掃除しようね。など励まし、お金と時間を減らしていきましょう。(鈴木)
・過食を周囲にカミングアウトした人は治りやすいと言われています(特に体重はきちんとあり、社会生活をしている人の場合)。「困っているということを言ってくれて、嬉しかったよ」と伝えるのはいかがでしょう。(小原)
・「虫歯になるから、吐いたら真水でうがいしてね。」「熱中症にならないように、梅干と水分を取ってね。」などの言葉で心配していることを伝えるのも有効です。(鈴木)