新型コロナウイルスの影響下で、摂食障害の当事者が家族に望むサポートとは?

新型コロナウイルスの拡大により、摂食障害を抱える方にも様々な影響が及んでます。家にいる時間が増える中、患者さんもご家族も様々な苦労を抱えていると思います。
そんな中、摂食障害の当事者によるオンラインイベント『DVD「摂食障害 理解と回復のために」上映会+経験者フリートーク会』 がWEB上で開催されました。当事者から語られた、コロナウイルスの影響下で、家族ができるサポートをお伝えします。

新型コロナウイルスが摂食障害の方に与える影響

新型コロナウイルスの拡大と、それに伴う外出自粛などの影響により、当事者(患者さん)は次のような影響を受けています。

  • 報道や、ピリピリした周りの雰囲気に影響を受ける
  • 家族と向き合う時間が増えることが辛い
  • バイトや学校などのルーティンがないのことの困難
    • 過食を抑えにくい
    • 生活が乱れやすい
    • 自己肯定感を感じられない
  • 不安を感じやすい性質による辛さ
    • コロナにかかる不安
    • 食べ物が買えない不安
    • 先が見えないことに対する不安

「気がまぎれるものがないので、家族や自分に向き合わざるを得なくてつらい」「一人暮らしで家にいると、やることがなくてますます症状が悪化してしまった」「コロナで買い物に行けないのをいいことに摂食量が減った」「バイトなどがなくなって自分を認められることがなくなり自己肯定感が下がる」「ただでさえ不安を感じやすいのに、周りもピリピリしていて不安なので、もっと不安になる」そんな声がありました。

では、家族には何ができるでしょうか?当事者の声を参考にいくつかのアドバイスをお伝えします。

摂食障害の当事者が、今、家族に望むこと

1.ピリピリしすぎない。元気でいる

不安を感じやすく周りの空気に敏感な摂食障害の患者さんは、ご家族が不安であったりピリピリしたりしていると、その影響を大きく受けます。病気で弱っているのだから「元気な人には元気でいてほしい」 「健康的な人のそばにいると、自分も影響されて健康になる」という意見には多くの賛同が集まりました。
ご家族も様々な不安を抱えているかもしれませんが、まず自分自身が元気でいる、ピリピリしすぎないことがご本人の助けになります。

2.(症状については)距離をおいて、そっと見守る

ご本人と同居されている方は、一緒にいる時間が多くなる分、食べ方や、食べる内容、嘔吐をしていないかなどの「症状」が、いつも以上に目について、気になってしまうかもしれません。ですが、食に関して逐一コメントされたり、批判的な目で見はられることは患者さんにとってつらいことです。症状に関しては、意識的に距離をおいて、見て見ぬふりをすることも必要かもしれません。

3.この機会を生かして、患者さんに向き合う、理解する

摂食障害を抱える方の多くが、家族や身近な人に病気のこと、そして自分自身のことを理解してほしいと思っています。その一方で「理解してもらえないのではないか」「家族が辛い思いをするのではないか」「軽蔑されたり白い目でみられるのではないか」という不安から、症状や辛さを打ち明けるのをためらいます。
外出自粛の影響で家族が家にいる機会が増えている今は、お互いの理解を深めるチャンスでもあります。家族の理解を得られている方は、コロナで家族が家にいるようになってほっとしたと述べています。この機会に、「何か困っていることはない?」「何かできることはある?」と聞いてみてはいかがでしょうか。また、今回のオンライン上のイベントを患者さんと家族で一緒に見たという方がいました。この時間を生かして摂食障害に関する情報を一緒に視聴するのもおすすめです。
(*ただし、ご本人が少しでも望む場合に限ります。その場合、ご本人何を観て、読んでほしいかを聞いてください。ご本人が望まない時に無理強するのはお勧めできません)

4.症状以外に部分(本人の健康的な部分)へのサポートを

これは、平時も一緒ですが、病気と本人を分けて考えて、本人の健康な部分にアプローチすることが大切です(詳しくは、健康な部分を大切にしましょう)。「過食をしてしまう、してしまった事実にフォーカスするのではなく、一緒に散歩いこうとか、他のリフレッシュに目を向けられるように介入され救われました」という意見がありました。現在の制限された生活の中で、リフレッシュを手伝ったり、一緒に楽しめる家の中での活動を手伝うことは助けになります。

この他にも「見えるところで批判や愚痴をやめてほしい(裏アカウントなどで愚痴る場合も絶対ばれないようにしてほしい)」「テレビなどの不安になる情報を制限してほしい」「お金がないなど本当に困った時には助けてほしい」など多様な意見がありました。

サポートする側が健康であることというのは一番大切ですね。一般的な留意事項は、日本赤十字社から「感染症流行期にこころの健康を保つために」という資料が出ていますので参考になさってください。

今の社会状況には、不安や辛いことが多いのは事実です。それは患者さんだけではなく、サポートする側も同じです。一方で様々な常識が崩れ、生活が変わる今は、よい変化へのチャンスでもあります。

したたかにこの困難を乗り切っていきましょう。

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