やせたい、でも食べたいと悩んでいる時、多くの人が思いつくのが嘔吐や下剤の使用です。たくさん食べてしまっても、出してしまえば元通り、体重は増えないと考えてしまうようです。
こうして、摂食障害/拒食症の約半数の人が過食しては嘔吐・下剤の使用を繰り返すという過食/排出型となっていきます。
しかし残念ながら嘔吐も下剤も食べたものをなかったことにできる魔法の方法ではありません。
なぜなら食べたものを「そのまま」吐き出しているのではなく、本来はリサイクルされるはずの大量の消化液とともに電解質(カリウムやクロームなど体に必要な物質)を一緒に吐き出しているからです。
そうすると、唾液腺がビー玉のようにはれたり、顔のえらが張り出し、虫歯も多くなります。
また、体のだるさや重症の便秘、ひどい時は不整脈や痙攣発作といった体の不調が生じてきます。
さらに困ったことには、栄養と電解質かたよりによって飢餓症候群が悪化し、過食の衝動がさらにひどくなるのです。
そうすると、飢餓→過食衝動→過食→肥満恐怖→嘔吐(下剤の使用)→さらに飢餓という悪循環にはまっていきます。(かんで吐き出すことも唾液を失うので同じです)
また過食中は頭が真っ白になり、嘔吐をするとスッキリするという麻薬のようなにはまる人もいます。
しかしその後には「またやってしまった」「どうしてコントロールできなかったんだろう」という罪悪感や自己嫌悪が襲ってきます。
また疲れ果て抑うつ感が強くなります。そしてこのこと自体がストレスとなり、病気の悪化を招きます。
過食・嘔吐がストレス解消の手段となり、体重が戻っても過食症に陥ってしまうこともあります。
このように嘔吐や下剤の使用は食べてもやせていられる魔法の方法ではなく、悪魔のわなにはまるよう非常に危険なものであることを覚えておいて下さい。
過食・嘔吐から抜け出すには?
過食嘔吐を減らしていくには、この悪循環のどこかを断ち切る必要があります。まず飢餓をやわらげなければ、過食の衝動はおさまりません。
これには飢餓を予防する食事と生物学的に無理のない体重を受け入れることが重要です。逆に、飢餓がなくなれば過食の衝動は必ずおさまってきます。
また、過食嘔吐がストレス解消の手段になっているならば、過食嘔吐に変わるストレス解消の方法を少しずつ見つけていくことが必要です。治療ではこうしたことのお手伝いをします。